民訴第1問

1(1) 弁論準備手続(168条以下)は、準備的口頭弁論(164条以下)や書面による準備手続(175条以下)と並んで、争点及び証拠の整理を行う手続きである。
 (2) 民事訴訟においては、判決をするためには、公開の法廷で両当事者の関与の下受訴裁判所の面前で口頭で弁論及び証拠調べを行って裁判する審理方式である口頭弁論を開かなければならない(必要的口頭弁論の原則、87条1項本文)。
   これは、口頭弁論が?公開主義、?双方審尋主義、?直接主義、?口頭主義などの諸原則の要請を満たし、当事者の手続き保障にもっとも資する制度だからである。
 (3) しかし、事件が複雑であるとか、大規模であるような場合に口頭弁論を実効的に行うためには、争点や証拠の整理手続きを行っておくことが不可欠である。
   そこで、かかる争点証拠の整理のための手続きとして、弁論準備手続き等が規定された。
2.弁論準備手続きの特徴
 (1) 弁論準備手続きは、準備的口頭弁論と異なって、判決のために不可欠である口頭弁論ではないから、裁判所の職権により手続きに付されるが、その際、裁判所は当事者の意見を聞かなければならない(168条)。
   また、当事者双方の申立てがあった場合には、裁判所は、当該手続きに付する裁判を取消さなければならない(172条)。
   これらは、口頭弁論と異なる特殊の手続きよりも、口頭弁論での手厚い手続き保障の下で紛争解決を図りたいという当事者の意思を尊重する趣旨である。
 (2) また、弁論準備手続きは、当事者双方が立ち会うことのできる期日に行われる(169条1項)。
   これは、争点や証拠の整理もその方法によってはその後の口頭弁論に大きな影響を与えることになるから、当事者双方に平等に手続きを保障しようとするものである。その意味で、?双方審尋主義の理念が現れているといえる。
 (3) 一方で、弁論準備手続きは原則として非公開とされるが(169条2項)、「相当と認める者」の傍聴は原則として許さなければならない(169条2項但書)。その限度で?公開主義の要請に配慮がなされている。
 (4) また、弁論準備手続きにおいては、書面による証拠調べのみが可能である(170条2項)。
実効的な整理を行うためには証拠調べを行うことが有効であるが、弁論準備手続きが口頭弁論でないことから、当事者の手続き保障に配慮がなされ、簡易な証拠方法である書面のみ証拠調べできることとされた。
3.終結の効果
 (1) 弁論準備手続きが終結すると、当事者は、その後の口頭弁論において弁論準備手続きの結果を陳述しなければならない(173条)。
   これは、必要的口頭弁論の原則の内容として、裁判所は口頭弁論に現れた資料のみを判決の基礎とすることができるとされると共に、その資料の収集は当事者の責任とされている(弁論主義)ことから、当事者が結果を陳述しないことで弁論準備手続が骨抜きとされないためである。
 (2) また、弁論準備手続の後に、新たな攻撃防御方法を提出した当事者は、弁論準備手続においてその証拠を提出できなかったことを説明しなければならない(167条)。
   この説明が不合理であるとか、説明されないような場合には、時機に遅れた攻撃防御方法(157条1項)として、その申し出は却下されるべきである。
   これにより、弁論準備手続の実行性を確保することができる。
以上