民法第1問

1.小問1について
 (1) AはCに対して、本件機械の引渡しを請求することができないか。
   Cは、Aから本件機械を買い受けたBから本件機械を賃借しているが、AはBの債務不履行により売買契約を解除(541条)している。そして、解除は当事者を契約から解放することを本質とするから、解除されると契約は遡及的に無効になると解する。
すると、BC間の賃貸借契約(601条)は、他人物賃貸借ということになる。他人物賃貸借も債権的には有効である(559条、560条)が、Bは所有者Aから引渡し請求された場合はこれを対抗できないから、Aの引渡し請求は認められるとも思える。
(2) もっとも、Cは、自己が「第三者」(545条1項但書)にあたるとして、賃借権をAに対抗できないか。
  この点、解除の効果が契約の遡及的無効にあることからすれば、「第三者」とは解除前に当該契約を基礎として新たに独立した法律上の利害関係を有するに至った者をいうと解する。
  ただし、解除権者には何らの帰責性もないことから、「第三者」として保護されるためには、法律上の地位を第三者に対抗できる要件を具備していることが必要であるというべきである。
  Cは解除前にAB間の売買契約を前提としてBから本件機械を借り受けたものであるから、「第三者」にあたるとも思える。しかし、動産賃借権は第三者に対抗することができない。
  よって、Cは「第三者」にあたらない。このように解しても、もともとCは、Bが本件機械を売却したような場合には賃借権を対抗できない地位にあるのだから、Cに酷とまでいえない。
(3) よって、Aは、Cに対して本件機械の引渡しを請求することができる。
2.小問2について
 (1) AC間の法律関係は、Dが現れたことによっても影響されない。
   よって、Aは、Cに対して本件機械の引渡しを請求することができる。
 (2) では、CD間の法律関係はどうなるか。
   まず、DはBから将来の賃料債権を譲り受けているが、将来債権の譲渡も、発生原因と範囲が確定している限り有効である。本問債権譲渡は、本件機械の賃料債権1年分であって発生原因も範囲も確定しているといえるので、有効な債権譲渡である。
   しかし、Cは、Aの売買契約解除により賃貸借契約が終了したとしてDへの賃料支払いを拒むことが出来ないか。「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」(468条2項)の意味が問題となる。
   思うに、468条2項の趣旨は、債権の譲渡が原則自由とされている(466条1項)ことに鑑み、債務者の地位を保護しようとする点にある。とすれば、「事由」には、広く、契約関係消滅等の原因となる事実を含むと解するのが相当である。
   そして、売買契約解除の原因となった、Bが代金を支払っていなかったという事実は、債権譲渡以前の事由であるから「事由」にあたる。
 (3) よって、Cは、Dに対してAB間の売買契約の解除を主張して、Dの賃料支払い請求を拒むことができる。
以上