選択2(倒産)

1.設問1(1)
(1)本件詐害行為取消訴訟は、破産者Aの債権者であるDが提起したものであるから、破産手続き開始決定により、中断する(破産法(以下、略す。)45条1項)。
   また、破産管財人はこれを受継することができる(同条2項)。
(2)もっとも、本件詐害行為取消訴訟において、詐害行為とされているのは、AB間の財産分与である。
   そして、財産分与は、本来、身分法上の行為であり、財産上の行為ではないので、詐害行為取消や否認の対象にはならないのが原則である。しかし、財産分与は、財産の譲渡という側面を有しているから、財産分与に仮託してなされた財産の譲渡といえるような特段の事情がある場合には、否認の対象たりうると解する。
(3)本問財産分与においては、AからBに対して甲マンションの所有権が移転されている。
   しかし、甲マンションは、Aが購入したものではあるが、そのローン支払い等実質的な購入資金はすべてBが支払っていたというのであり、その支払いも離婚時までに完済されていたのであるから、甲は、実質的にはBに帰属する財産であるといえる。
   とすれば、本問財産分与は正当なものであり、その名に仮託して譲渡がなされたものとはいえない。
(4)よって、本問財産分与は否認の対象とはならないので、管財人としては、これを受継する必要はない。
2.設問1(2)
(1)破産手続きと免責手続きは、実質的には一体の手続きであるから、破産終結後、免責決定までの間に強制執行が許されるとすると、総債権者の公平や債務者の経済生活の再建という破産法の目的(1条参照)に反することになる。
そこで、免責許可の申し立てがあった場合には、破産手続終結後の強制執行は、免責許可の申し立てに対する裁判が確定するまでは、行うことができないものとされている(249条1項)。
(2)すると、?の場合には、Bの差押えは許されないとも思える。
   しかし、Bの有する債権は、Cの養育費についての請求権であるから、非免責債権であり(253条1項4号ニ)、免責許可決定がされても免責されず、?の場合には強制執行の対象となるものである。
   そいうであれば、これにつき免責の裁判の前に強制執行することをみとめても、債権者の公平や破産者の経済生活の再建を害するとはいえない。むしろ、このような債権の満足は、迅速に行われるべき要請が強い。
   よって、非免責債権については、249条1項は適用されないというべきである。
(3)以上より、?の場合も、?の場合もBの差押えは、民事執行法152条1項2号、3項により差押えが許される限度で(差押え債権額の2分の1)、許される。
3.設問2(1)
(1)破産手続き開始決定がなされると、破産者の有する一切の財産は、破産財団となり(34条1項)、その管理処分権は管財人に専属する(78条1項)。そのため、破産財団に関する訴訟は中断し(44条1項)、その追行は管財人により行われることになる(44条2項)。
(2)しかし、差押えの対象とされない債権については、破産財団に属しないこととされる(34条3項2号本文)。 
そして、本件でBが請求しているのは慰謝料であるところ、慰謝料債権は一身専属的なものであるから、原則として差押えの対象とならない。他方で、慰謝料債権も、単純な金銭債権であるから、客観的にその額が確定して履行を残すのみである場合や、相続された場合には、差押えの対象となると解する。
(3)本問では、いまだ訴訟追行中であり、その額が客観的に算定されたとはいえないので、Bの慰謝料債権は差押えの対象でなく、破産財団に属しない。
   よって、Bは、なお同債権についての管理処分権を有しているので、当該訴訟の当事者適格を有しているといえ、訴訟追行することができる。
4.設問2(2)
(1)この場合、Bの債権は、客観的にその額が確定し、履行を残すのみになったといえるので、差押えの対象になったといえる。
(2)すると、この債権は破産財団に属するので(34条3項2号ただし書)、その管理処分権は管財人にすることになる(78条1項)。
(3)よって、管財人は、その履行を求めることができる。
以上