検察側の控訴、ゼロ…裁判員裁判46件で

 裁判員裁判が8月に始まってから10月末までに46件の判決が言い渡されたが、検察側が控訴したケースはまだない。
 判決の中には、求刑の半分にまで刑が軽減されたり、起訴した罪の成立が認められなかったりしたケースもあるが、いずれも控訴を見送った。背景には、裁判員として加わった国民の判断を検察が尊重するなど1審の重みが増したという事情がある。
 これまでの裁判員裁判の判決に対し、11日までに控訴が出されたのは弁護側による10件(1件は取り下げ)にとどまる。司法統計によると、昨年に言い渡された控訴審判決のうち、検察側が控訴したケースは殺人・同未遂事件で約12%、強盗致死傷事件で約5%あった。
 裁判員裁判の判決は、大半が求刑の6割から求刑年数までの範囲に収まっているが、検察側の求刑とかけ離れたケースもある。
 大阪地裁であった覚せい剤密輸事件の裁判員裁判では、9月9日、懲役10年の求刑に対し同5年の判決が言い渡された。検察当局は控訴を検討。同時期に覚せい剤密輸事件を審理した福岡地裁裁判員裁判が、密輸量としては大阪の事件の半分以下だったのに懲役7年(求刑・懲役9年)を言い渡していたため、「刑の公平性が保てない」と控訴に積極的な意見が強かったという。
 しかし、覚せい剤の密輸入を被告が明確に認識していたことの立証が甘かったという反省もあり、「裁判員の量刑感覚を問題にすることはできない」との結論に。ある検察幹部は「従来なら控訴していたのではないか」と語る。
 横浜地裁裁判員裁判では10月8日、検察側が主張した「現住建造物等放火罪」の成立を認めず、「建造物等以外放火罪」を適用して懲役3年、保護観察付き執行猶予5年(求刑・懲役4年)を言い渡した。検察内には控訴すべきという意見もあったが、ビニール傘に火を付けた被告に、建物を燃やす認識があったことを裏付ける捜査や立証が十分ではないとの判断から、やはり控訴が見送られた。
 裁判員裁判では、審理の迅速化のため、証拠と争点を絞る公判前整理手続きが適用され、同手続きで検察が提出するとした証拠以外の証拠の「後出し」は認められにくい。その上、最高裁司法研修所が昨年11月に公表した研究報告でも、職業裁判官のみで審理される控訴審は、国民の視点や感覚が反映された1審判決を尊重するべきで、「控訴審で提出できる新証拠の範囲は狭くなるのではないか」としていた。
 東京地検幹部は「従来の裁判では控訴審で新たな証拠を出し、1審判決を覆すこともできたが、今後はこうしたやり方は難しくなる。捜査や1審での立証を充実させる必要がある」と話している。(読売新聞)


 制度開始から言われてた問題ですけど・・・おかしくないか?
 まあ、いままでの裁判運用が不適切で、裁判員裁判になってそれが改善されたとみることもできるんだけど・・・
 「裁判員の量刑感覚を問題にすることは出来ない」といって刑の不均衡が放置されるのであれば本末転倒だろう。